■「人のせいにしない姿勢が成長を生む」
今回の役員スピーチでは、日々の業務や人間関係の中で目立ってきた「人のせいにする姿勢」に対し、問題提起がなされました。失敗や成果が出ない原因を外部環境や他者のせいにする人は、根本的な改善を行えず、同じミスを繰り返してしまいます。対照的に、自分の行動を振り返り、「もっとできたことがあった」と自責で捉えられる人は、経験を糧に進化し続けることができます。この思考の違いこそが、仕事の質と成長スピードに大きな差を生むのです。
■「仕方がない」は本当に仕方がないのか?
例えば、冬の悪天候で電車が遅れ、遅刻した場合。「雪のせいで仕方ない」と考える人は、その先も何度も同じ状況に陥ります。一方で「雪が降る可能性を事前に予測し、もっと早く出るべきだった」と考える人は、次回以降の行動を変えることができます。このように、“仕方がない”という言葉の裏には、実は“少しの準備不足”や“努力の欠如”が隠れています。つまり、ミスやトラブルの多くは性格ではなく、行動と習慣の問題です。
■経験が足かせになることもある
知識や経験が豊富な人ほど、過去の成功体験が固定観念となり、思考の範囲を決めてしまいます。逆に、経験の浅い人は、先入観がないために、思考の範囲を超えて柔軟に対応できることがあります。このように、成功体験がかえって視野を狭めるリスクもあることを、私たちは常に自覚しておく必要があります。
■上司が評価するのは“自責で動く人”
トラブルや失敗が起きたとき、「私の責任ではありません」と必死に弁明する人と、「自分にできることがあったはず」と率先して改善に動く人、どちらが信頼されるでしょうか。答えは明白です。上司は一緒に仕事を進めるパートナーとして、責任を持って行動し、問題を乗り越えようとする人にこそ仕事を任せたいと考えています。結果的に、「自責で動ける人」こそが評価され、成果を上げやすくなるのです。
■意識の違いが人生を分ける
「自責」とは自分を責めることではなく、「自分に責任を持つ姿勢」です。逆に「他責」は、問題の原因を常に周囲に求め、改善を放棄する考え方です。この意識の違いが、長期的に見れば大きな差となって現れます。働くうえで、当事者意識を持ち、自分ごととして課題に向き合えるかどうかが、プロフェッショナルとしての信頼や成長の鍵となるのです。
■考え方×熱意×能力=成果
稲盛和夫氏の有名な言葉に「人生と仕事の結果=考え方×熱意×能力」があります。この式の中で唯一マイナスになり得るのが「考え方」です。どれだけ能力があっても、考え方がネガティブであれば、全体の成果はマイナスに転じてしまいます。逆に、前向きで建設的な考え方を持つ人は、たとえ経験が少なくても、熱意と努力で成果を出すことができます。
■小さな意識の変化が、未来を変える
「ちょっとした差」が結果として大きな違いを生みます。他人や環境のせいにせず、「自分がどうするか」「どう変われるか」を考えることが、成長と信頼を積み上げる第一歩です。会社としても、こうした当事者意識を持った社員が増えることが、組織全体の強さにつながります。