円形脱毛症を発症した方の中には、一旦症状が改善しても数か月~数年後に再発してしまう方がいます。円形脱毛症は治癒するまでに長い期間がかかるため、再発は大きなストレスになる方も多いでしょう。
そこで今回は、円形脱毛症を繰り返す原因と再発を防ぐ方法について分かりやすく解説します。
繰り返す円形脱毛症の症状にお悩みの方は、ぜひご一読ください。
円形脱毛症を繰り返すのはなぜ?
年齢や性別を問わず誰でも発症する可能性がある円形脱毛症は、さまざまなことが複合的に重なり合って発症すると言われています。1度発症したことがある方が再発することも多く、繰り返し現れる症状に悩む方は少なくありません。
ここでは、円形脱毛症を繰り返す理由として考えられる要因について解説します。
1.自己免疫疾患
人間は生まれながら、細菌やウイルスなどの異物の侵入を防ぐために「免疫機能」が備わっています。
自己免疫疾患とは、免疫機能になにかしらの異常が生じると自身の細胞や組織を攻撃してしまう疾患のことです。円形脱毛症は、免疫機能に異常が生じた際に、正常な毛包が異物として攻撃されることで発症します。
以下の自己免疫疾患を持つ方は、円形脱毛症を併発しやすいと言われています。
- 甲状腺疾患(橋本病・バセドウ病など)
- 尋常性白斑
- 全身性エリテマトーデス(SLE)
- 膠原病
- 重症筋無力症
2.アトピー素因
アトピー素因を持つ方は、円形脱毛を発症しやすいと言われています。
アトピー素因とは、アレルギーに反応する抗体をつくりやすい体質のことです。アトピー性皮膚炎をはじめとした、気管支ぜんそくやアレルギー性鼻炎、結膜炎などといったアレルギー症状が起こりやすいのが特徴です。
円形脱毛症を発症した方は、なにかしらのアレルギー性疾患を合併していることが多く、なかでもアトピー性皮膚炎との合併率が高い傾向にあります。重度のアトピー性皮膚炎の方が円形脱毛症を発症した場合、重症化しやすいとも言われています。
自身もしくは家族がアトピー素因を持つ方が、円形脱毛症を発症した場合、繰り返し発症する可能性が高いため注意が必要です。
3.遺伝
円形脱毛症の発症は、遺伝も大きく影響すると言われています。
「日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン」によると、円形脱毛症は家庭内での発症率が高い傾向にあることが発表されています。また、欧米では1親等内での円形脱毛症の発症は、一般に比べて10倍であるという調査結果もあります。
家族内に円形脱毛症を発症したことがある人がいる場合、再発のリスクも高いと言えるでしょう。
4.精神的ストレス
円形脱毛症と精神的ストレスを関連付けて語られることは多いですが、実は直接的な因果関係はありません。
とはいえ、円形脱毛症を発症した多くの人が、なにかしらのストレスを抱えているのは事実です。ストレスは、自律神経を乱し免疫機能の異常を引き起こす要因になりかねません。免疫機能に異常が生じることで、自己免疫疾患を引き起こすことも考えられます。
円形脱毛症を繰り返す場合は、ストレスを溜めこまないように十分注意しましょう。
繰り返す円形脱毛症…再発を防ぐ方法はある?
円形脱毛症が発症すると、「また同じ治療を繰り返すのか…」と、つらい気持ちになる方も多いでしょう。
円形脱毛症の治療に関する研究は、日々進められていますが、残念ながら根本から治す治療法は未だ確立されていません。
再発を防止する治療法に関しても同様です。
しかし、さまざまな研究により有効性が確認された治療法もあります。症状や体質、年齢などによって推奨される治療法は異なるため、かかりつけの医師に相談のうえ、自分に合った治療法を探すことが大切です。
円形脱毛症の治療について知っておきたい注意点
まだまだ解明されていないことも多い円形脱毛症ですが、適切な治療を行うことで回復する可能性はあります。しかし、円形脱毛症を発症した方の中には、治療を行わず、そのまま放置してしまう方も少なくありません。
ここでは、円形脱毛症の治療でぜひ知っておきたい注意点を一緒に確認しましょう。
1.自己判断で放置しない
円形脱毛症とひとことで言っても症状は幅広く、軽症から重症の方までさまざまです。円形脱毛症は、以下の5つの病型に分けられます。
病型 | 症状 |
---|---|
単発性通常型 | 毛髪に脱毛斑が1か所できる |
多発性通常型 | 毛髪に脱毛斑が複数できる |
全頭型 | 脱毛が頭部全体に及ぶ |
全身型(汎発型) | 毛髪だけでなく、眉毛・睫毛・体毛まで脱毛する |
蛇行型 | 側頭から後頭部の生え際が帯状に脱毛する |
円形脱毛症をはじめて発症した場合、コインのような大きさの脱毛斑が1か所出現する「単発性通常型」であるケースがほとんどです。
単発性通常型の場合、特に治療しなくても自然に治癒する可能性が高いです。しかし、一旦治ったと思っても再発することがあります。
再発した場合、多発性通常型や全頭型に移行する確率が高まります。はじめて発症したときは自然治癒したからといって、自己判断で放置すると症状を進行させてしまうおそれがあるため注意が必要です。
2.治療を中断しない
円形脱毛症の症状は、以下の3つの期間に分けられます。
期間 | 症状 |
---|---|
進行期 | 髪の毛を引っ張るだけで簡単に髪の毛が抜け落ちる |
固定期 | 多少髪の毛を引っ張っても抜けなくなる |
回復期 | 脱毛斑から産毛が生えてくる |
進行期は、髪の毛を引っ張るだけで簡単に髪の毛が抜け落ちるため、治療に専念する方がほとんどでしょう。しかし、抜け毛が治まる固定期や産毛が生えてくる回復期に入ると、治療を中断してしまう方も少なくありません。
勝手な自己判断は、脱毛の症状を繰り返すことになりかねません。
円形脱毛症の症状の見極めは、非常に難しいです。もし治療を止めたい場合は、自分で判断せず必ず医師に相談しましょう。
繰り返す円形脱毛症を防ぐ4つの対策
長い時間をかけて治療し、ようやく治った円形脱毛症は、できることなら繰り返したくはありませんよね。
ここでは、繰り返す円形脱毛症を防ぐための方法を4つご紹介します。つらい円形脱毛症を繰り返さないためにも、ぜひ参考にしてください。
対策①:バランスの良い食生活
健康な髪を育てるためには、栄養バランスのとれた食生活が欠かせません。暴飲暴食や過度な食事制限は髪の成長を妨げます。栄養バランスを意識した食生活を心がけましょう。
円形脱毛症を繰り返さないために、積極的に摂取したい栄養素は以下の通りです。
栄養素 | 役割 | 多く含む食品 |
---|---|---|
亜鉛 | ・髪の主成分であるケラチンの生成をサポートする・不足すると抜け毛の増加につながる | 牡蠣豚肉牛肉きなこ海苔アーモンドなど |
たんぱく質 | 髪の主成分であるケラチンを作る | 鶏肉豚肉マグロカツオ大豆製品卵類など |
ビタミン | ・髪だけでなく、皮膚(頭皮)の成長にも影響を与える・亜鉛の吸収やたんぱく質の生成をサポートする | 肉類緑黄色野菜果物ウナギカツオ卵類ナッツ類など |
上記は、あくまでもおすすめの栄養素の一例です。特定の栄養素ばかりを摂取するのではなく、さまざまな食材からバランスよく摂取しましょう。外食が多い方や偏食しがちな方は、サプリメントを活用するのもおすすめです。
対策②:質の良い睡眠
円形脱毛症を繰り返さないためには、質の良い睡眠も不可欠です。人間は、寝ている間に細胞の修復や再生を行っています。睡眠不足や寝つきの悪さが気になる方は、快眠できるよう睡眠環境をしっかり整えましょう。
質の良い睡眠環境をつくるポイントは以下の通りです。
- 遮光カーテンや雨戸などを利用し、できるだけ光を遮断する
- エアコンを利用し、適温を保つ(夏場は25~26℃、冬場は22~23℃程度が適温)
- 乾燥しやすい冬場は、加湿器を利用する(湿度50%~60%が理想的)
入眠をスムーズにするためにも、寝る前のスマホやテレビは控えましょう。脳が覚醒して入眠を妨げる要因になります。
リラックス効果が高いラベンダーやカモミールなどのアロマを活用するのもおすすめです。ぐっすりと深い眠りにつくことにより、目覚めもよくなります。朝目覚めたら、カーテンを開け、朝日を浴びて体内時計を整えましょう。
対策③:ストレス発散を心がける
先述の通り、ストレスと円形脱毛症は直接的な因果関係はありません。しかし、ストレスは心身の健康に悪影響を及ぼします。
特に真面目な方や心配性の方は、自分では気が付かないうちにストレスをため込んでいる可能性があります。再発の確率が高いと言われている円形脱毛症は、一旦治っても再発するのではないかと心配する方も多いでしょう。
過度な心配はストレスにつながります。あまり考えすぎず、おいしいものを食べたり夢中になれる趣味を見つけて、上手にストレスを発散しましょう。
対策④:専門医に相談する
円形脱毛症を発症した際は、なるべく早めに医療機関を受診することをおすすめします。円毛脱毛症を完治させる方法は確立されていないとはいえ、症状に合った適切な治療を受けることは大切です。
信頼のおける専門医に相談し、納得のいく治療法を提案してもらいましょう。
まとめ
円形脱毛症を繰り返す要因は、自己免疫疾患やアトピー素因、遺伝などさまざまなことが考えられます。
はじめて円形脱毛症が発症した場合や軽症の場合は、自然治癒するケースもあります。しかし、症状を進行させないためにも、再発した場合は放置せず早めに専門医に相談しましょう。
また、円形脱毛症を再発させないためには、日ごろからバランスの良い食生活や質の良い睡眠、ストレス解消など心がけることも大切です。